夢の中

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「変なこと言ってもいい?」 「どうした?」 「最近見る夢があって。前後のつながりは毎回違うんだけど、ねぇ、覚えてる?って聞かれるの。それって古賀君だったのかなぁ」 「急にどうした。俺達、ソフトドリンクしか飲んでねぇぞ」  意味不明なことを言い出した私に古賀君は冗談を言ってから、ふと真面目な顔になった。 「その声の主が俺かどうかはわかんない。でも、今必要だから小柳のとこに届いたんじゃないか?」  古賀君はそう言って私を見た。 「俺、高校の時思ってたよ。他のやつが気づいてたのかはわかんないけど、小柳が面白いやつだってこと」 「なんで? 友達もいなかったのに?」 「友達と言える友達はいなかったかもしれない。でも、小柳は自分から人を寄せ付けないだけで、すごい人が好きなんだよ」  いつの間にか運ばれて来ていた焼き鳥を古賀君は美味しそうに食べた。 「俺が笑ってって言ったら、すごいいい笑顔で笑ってくれてさ。実はあの時小柳のこと好きだった。あ、これ美味しいぞ」  衝撃的な事実を告げながら、古賀君は私の取り皿に焼き鳥を置いた。 「だから、要するに小柳はそのままで十分魅力的なんだから、変に構えることはないよ。笑ってれば人は自然とやってくる」  古賀君の言葉を聞いて一本の芯が私の中で通って気がした。気持ちが軽くなったような気がした。単純なのかもしれないけれど、私は私でいいのだと思わせてくれた言葉が古賀君の言葉には込められていた。 「でも、今更急に人と親しくなんてできないよ」 「だから、急にじゃなくていいんだって。少しずつでいいんだよ。今日は一度笑えたとかそんな感じで」 「変に思われないかな?」 「思われないよ。小柳は昔も今も魅力的だよ」  古賀君は高校の時からそうやって、誰に対しても、てらいなくストレートな言葉を発することが多かった。そして私は、そんな古賀君には肩肘張らずに会話をすることができた。  それから古賀君とは高校時代の話になり、私達は高校時代の友人として他愛もない会話を重ねた。
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