好きをわすれないで

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 真翔は強張った体に力を入れ、柚一の震える背中に労わるような手で触れた。だが飛んできた柚一の手により、「触んなっ!」と()ねのけられてしまう。  拒まれたことにショックを受ける。モヤモヤしていた感情が一気に爆発し、気づけば真翔は横からしがみつくような体勢で柚一の体を抱きしめていた。 「なにすんだよ! 離せ!」  離してやりたいのに、抱きしめた腕の力を緩めることができない。 「おい離せってばっ! 真翔っ!」 「……っ」  真翔――子どもの頃からずっと呼ばれていた呼び名なのに、今は聞きたくなかった。  柚一の中で、自分と『マナ』は別の人間なのだ。その事実をまざまざと実感し、やるせなかった。 「いい加減にしないと本気でキレるぞ!」  後ろ足に、踵で(すね)を蹴られる。「いっ」と歯を食いしばって痛みに耐えるが、柚一は容赦なく同じ箇所を蹴ってきた。  やがて互いの足がもつれあい、傾いた重心のせいで体勢が崩れた。二人して倒れこんだ先は、マットレスの上。  柚一を押し倒していたことに気づいたとき、柚一の顔がすぐ目の前にあった。ドキッとした。真翔は起き上がろうとしたが、太ももに触れたもの――それを認めた瞬間、驚いて目を見開いてしまった。  真翔の反応から察したのだろう。 「なんだよ。声出せないくらい引いたか?」  マットレスで仰向けに倒れた柚一が、自嘲気味に言った。 「なんで……マナと同じ匂いしてるかなぁ。顔も声も、中身だって……っ」  ガラス窓に爪を立てた音のような声が、柚一の口から吐き出される。柚一は両手で目をかきむしるようにして、「マナに、会いてぇよぉ……っ」と小さく叫んで再び泣き始めた。  自分の真下で泣く柚一が痛々しかった。キリキリと胸が痛かった。  この気持ちは……同情なのだろうか。柚一の泣き腫らした目を、涙がさらに濡らしている。  真翔は思わず、涙でぐしょぐしょになった柚一の頬に指先を当てた。それも手で拒まれ、心臓がじくっと膿を溜める。 「触るな……っ」  下半身をこんなに硬くさせておきながら、今なお拒む男がわからなかった。『マナ』と同じ匂い、顔、声、中身だというのに……どうして自分は、ここまで拒まれなくてはいけないんだろう。  悔しくて、奥歯をギリッと噛む。真翔は柚一の下半身に手を伸ばした。ベルトを外し、チャックを下げる。スラックスの抵抗から解放されたそこは、下着の中で存在を主張していた。 「な、に……っ!」 「辛いんだろ」 「そんなこと、真翔が気にすることじゃ――……あっ!」  下着の上から先端を爪で引っ搔くと、柚一の腰がピクッと跳ねた。  テントを張った下着の表面に、じわっと染みが広がっていく。柚一は今の刺激だけでイッたようだった。絶望した表情で「ぁ……」と自分の下半身を見下ろした。 「なにすんだよ、このバカ!」  柚一は手元の枕を真翔の顔に押しつけると、涙と怒りを湛えた目で睨みつけてきた。  顔を圧迫する枕を奪い、床に投げ捨てる。真翔はまだ硬さを保った男の下半身に手を伸ばし、ゴム部分に手をかけ下着を下げた。  あらわになった柚一のそこは、吐き出した精液にコーティングされ、いやらしく濡れ光っていた。  抵抗する手をかわし、柚一のそこを手で包み込む。嫌がっていた柚一も、性器に与えられる刺激には敵わなかったようだ。 「っあ……」  と甘く高い声で啼いた。
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