イケメン男子高校生はまるで華麗な執事のような ①

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イケメン男子高校生はまるで華麗な執事のような ①

 泥で汚れてしまったズボンを見下ろし困り果てていた彼に近寄り、傘をさしかけた。それに気づいた彼は顔を上げパチパチと綺麗な瞳を瞬かせた。 「あの……そのままではお困りでしょう? よかったら……その……俺の家に来ませんか?」 「へ?」 「あ――俺の家すぐそこですし、失礼ですが……その恰好じゃあ待ってても次のバスにも乗れませんよね……? だから、行きましょう?」  彼は少しだけ逡巡する様子を見せたが、彼としても俺の申し入れがありがたかったのか「助かったよ。実はここ乗り換えだから俺の家歩いて帰るには遠くて――」と笑った。  いや、何? 天使? お迎え来た? 俺生きてる? 大丈夫? 「――どうかした?」 「あ、と。いえ何でもない、です。さぁ風邪ひいてしまってもつまりませんし、急ぎましょうか」  俺は少しだけ彼の先を歩き、今来た道を引き返した。  先に言っておくと今から彼を連れていくのは家族も住む一軒家だ。  だけど家族はみな仕事や用事で家にはいない。  という事は、俺と彼のふたりっきり、という事だ。  まぁ勿論、だからといって彼と今すぐどうこうというつもりはない。  なったら……嬉しいけど、がっつくつもりはない。  悲しい事に多分彼は俺の事を覚えていない。  だからたとえ彼が自分のテリトリーに入って来た可愛い兎だったとしても、笑って逃がしてやるくらいの余裕を見せなくては。  俺は彼の事が好きで大事で、愛しくてたまらないのだから。  すぐ近くと言ったわりに十分以上歩いて着いた我が家。  彼の方をちらりと見るがその事に関して特に思う所はないようで、「うわー大きい家だねー」なんてのんびりと可愛い様子だ。  俺は申し訳ないけど玄関で少しだけ待ってもらって風呂の支度をして、大きなバスタオルを手に彼の元に戻った。 「――その……そのままだと泥が落ちちゃうんで……そこでズボン脱いでもらっても……いいですか? 俺、むこう向いてるんでバスタオルで隠してもらえたら……」 「あ、うん。そうだよね。ありがとう」  彼はそう言うと俺がむこうを向く前なのにベルトに手をかけカチャカチャと外し始めた。  ちょっ、ちょっと――っ!?  慌ててむこうを向き目を瞑った。 「ふはっそんなにしなくてもいいよ? 別に男同士だしなんも恥ずかしくなんかないからさ」  のんきで可愛い事を言う彼。  いや、あの……目の毒なんですよ。俺が大丈夫じゃないんです。  目の前で脱がれた日には俺は自分の理性が持つ自信がありません。  大事にしたいのにあなたの事啼かせてしまいたくなる……。  頑なに背中を向けたままの俺に彼はおかしそうに笑った。 「あはは。キミ、おもしろいね。もうこっち向いてもいいよ?」 「ちゃんとバスタオル巻きました? 隠しました?」  何度もしつこく確認する俺に彼は呆れもせずちゃんと毎回返事をくれた。 「うん。大丈夫だから」  恐る恐る向き直り彼の方を見るとたしかにバスタオルで下半身はしっかりと隠されていた。――――が、安心して風呂へ案内しようとした瞬間、 「じゃあ、こっち……へぁ――――――??????」  彼が動いて防波堤であったはずのバスタオルがばさりと落ちた。  露わになる彼のか……か……下半身!?  俺は盛大に鼻血を吹き出した。
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