訓練開始

11/18
前へ
/455ページ
次へ
-------- 『小春…』 「分かってる!言われなくても…分かってる。向いていない」 トイレの水で顔を濡らす。 あの程度じゃ汗ひとつも出ないけど、凛と藍斗を見ていると、少し熱くなった。 だけど本当にもう、私は偽るのが苦手だ。 『向いてないな』 「怪しまれてると思うか?」 『まぁ…な。いくら右手の刀の扱いが不慣れだからって、身体はいつも通り動くんだ。キレッキレだったぞ』 妖蛭(ようてつ)はケラケラと笑っている。 くそ。うまくいかない。 「だいたいさっきのが下等種だって?あの鳴海って女、ふざけている。下等種はもっと弱いはずだ」 『あぁ、そうだな。あれは人に成りすませるくらいの力がある妖魔のレベルだな』 「下等種じゃないから、右手だと心許くて、反射で身体がうごいてしまった」 『必死に2人を守りながら立ち回ってたな。情が移るのが早くないか?』 「違う。仮想だとしても、目に前で妖魔にやられそうな奴がいたら助ける。それは…普通のことだから」 その普通が今回普通じゃないんだけど。 怖がるふりをしなきゃいけなかった。だけど、いやいや、これ下等種じゃないだろと思ったら、鳴海に対しての不信感しかなくて…… あと、2人の動きが面白かった。 必死に思考しながら動いていると分かった。 45度回せと言ったが、ズレもなく凛は刀を回して振り下ろした。動き回る妖魔に対しての、繊細なコントロールは、上出来だ。 それに藍斗。 よく分からないけど、最後に指示はしてないのに刀を放り投げた。 刀は綺麗な軌道のまま、最高の角度で妖魔の首に刺さるところだった。 まぁ力加減やスピードが足りなくて、上手くはいかなかったが。 あれは…センスなのか
/455ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加