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「あの人が居なければどうなってたことか」
はぁと奏多は溜息をついて、前を歩き出した。
俺たちでは妖魔には敵わない。憎しみがあるだけじゃダメなのに。分かっていたのに。
やっぱりアービターの下で訓練をして、妖魔の弱点や倒し方を学ばなければならない。確実に急所を仕留めたあの刀。あんな風になりたい。
自己満足でしてきた訓練と実戦では訳が違う。
立ち上がって刀を抜くことすら出来なかった。大事な人が襲われそうになっていたのに。
「ねぇ?藍斗?」
「なんだ?」
「ほんとにアービターに入るの?」
今のみたでしょ?そう言いたげな亜子。わかってるよ。手も足も出ないし逃げることも出来なかった。
こんな奴がアービターに入るなんて言うなってことだろ?
わかってる…
でも…
「あぁ。はいるさ」
何かあった時……今みたいな時に、2人を守れる自分になりたいんだ。
父さんが俺たちを守ってくれたように。
「まぁまぁ、亜子は心配してるだけだろ?藍斗はやるって言ってるんだ。強くなった方が身を守るためにいいだろ」
奏多…
ありがとう。
亜子も渋々だが、わかったわよと言い黙った。
それにしても…さっきの兎の面の人は、誰だったんだろう。あの大きな妖魔を一瞬で倒した。
それも確実に。
小柄に見えたから、そんなに力は無いと思ったが、マントに覆われてるだけで、筋肉は凄いのかもしれない。
そして妖魔に襲われた為、都の中心から処理班が来ている。
一応襲われた側として、話をしに行かなければならない。亜子をみると、怖がってはなさそうたから、三人で向かう。
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