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「君たちか?妖魔と遭遇したのは」
顔や手がすべて覆われる服をきた人達が現れた。アービターの妖魔処理班だ。肉片や血に直接触れるのは禁止されている。
「はい、そうです」
初めてだな。アービターの人と話すのは。顔は見えてないからどんな人かはわからないけどね。
「誰がこの妖魔を倒したんだ?討伐団員の姿が見えないが。妖魔の身体は屋根の上で朽ちていて、先程処分したんだが、頭は君たちが処理してくれたのかい?血も無くなっているが」
まさか拭いてしまったのか?そう尋ねられた。俺たちは何もしていない。何も出来なかった。
妖魔の頭が落ちていたところには、血の跡が残っているが、血は殆どない。それに頭も消えている。
だってそれは…あの兎の面の人が……
あの時の光景を思い出し、すこし口ごもっていると、処理班の人は「あぁ、あいつか」そう言って何か納得した様子になった。
「兎の面をつけた人が助けてくれたんです。あの人もアービターなんですよね?」
そんな俺の言葉に処理班の人は眉をひそめた。その顔はまるで嫌なものの話でもするかのよう。
そして、俺の方は向かずに「そうだよ」と答えた。
……なんだこの反応は。
助けてくれたのに。しっかりとアービターとしての役目を果たしてるんじゃないのか?
まぁ確かに、大丈夫か?今助ける!みたいな言葉は一言も聞いてないし、妖魔の首を斬り落とし、俺たちの安否を確認することもないまま立ち去ってしまった。
「とりあえず話を聞けたから帰っていいよ」
……
なんだかひっかかる。
「ほら、藍斗!帰ろうよ」
「待って…」
亜子の手を振りほどき処理班の人に近づく。助けてくれた人の事くらい…知っておきたい。
「あ、あの!兎の面の人…なんていう方ですか?」
もしアービターへの入団が認められたら、お礼を言いに行きたい。いつかあの時はありがとうございましたと伝えたい。
でもそんな俺を哀れなものを見るような目で見て言った。
「あいつはバケモノだ。君が思ってるような奴じゃない」
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