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「藍斗!宿舎の時間に間に合わないよ!」
バケモノ?
バケモノである妖魔を倒してくれた人を、バケモノ呼ばわりって……なんなんだ?態度の悪い妖魔処理班の人に少し嫌な顔を向けた。
「こら!話聞きなさいよ!」
固まって動かない俺の頭を後ろから小突いた亜子は、俺の手を引いて歩き出す。
もう少し話を聞きたかったけど、教えてくれなさそうだったな。
隣に並んだ奏多が小さな声で話しかけてくる。
「お前、アービターに入りたいって言う癖に、全然何も知らないんだな」
「どういう事?」
もう少し人が少なくなってから話そう。そう言って亜子と俺を連れて人通りの少ない道を歩いた。
妖魔騒動があったからか、都だと言うのに、人影が少ない。賑わっていたはずなのに。
「さっきの兎の面の人。あれが、アービターの団長を殺した人だよ」
「……え?」
少しして奏多が話し出した。
さっき助けてくれた人が、あの噂の二人組のうちの一人?
「二人組って言われてるけど、入団テストで団長を殺したのはあの兎の面の人。もう一人は側に居ただけ。噂だったけど…本当にいたんだ」
「本当にあの人が?助けてくれたんだぞ?」
俺に聞くなよ。と言ってまた先頭を歩き出す。
あの人は……本当にアービターの団長を殺したのか?そんな風には見えなかった。いや……確かに俺も殺されると錯覚した。
分からないけど…でもアービターに入団できたら、会えるかもしれない。
「礼を言いたいんだ」
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