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妖魔と人
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妖魔王の名を 妖蛭 と言う。
妖蛭は自由奔放で数多の妖魔を纏めるというより、王の座を気にもしないかのように、フラフラと人間を観察しながら放浪する少し変わった妖魔王だった。
だった
そう。過去のこと。
妖蛭は、前妖魔王だ。
妖蛭が王の頃は、妖魔は今よりもずっと、穏やかだったと言う。もちろん妖魔だ。人を襲う。だけどそれは下等種の話。
ヒトの形をする者である妖魔は…
人間と共に過ごしていた。まるで、人間になりたいと言わんばかりの振る舞いだった。
妖魔王の妖蛭がそうだったように、他の妖魔もそういう意識が芽生えていた。
各地で妖魔の被害は起こり続ける。だが今とは少し雰囲気の違う妖魔達だった。
でも王が変われば、家来が変わる。民衆も変わる。
前妖魔王の妖蛭が今の妖魔王に首を落とされて以来、ガラリと妖魔達の動きが変わった。
妖魔達は更に人を襲うようになり、統率された動きを始める。まるで人間を制圧して、クニを作ろうとしているかのような動き。
時代が変わるごとに妖魔は強くなる。そんな気さえ起こる。
そして藍斗達はその時代の変わり目にいた。
前妖魔王が殺されたのは、つい最近のこと。10年以内に起こった出来事なのだから。
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『アービターには顔は出さなくていいのか?』
「……人がいる時に話しかけるな」
『そうだな。お前の声は周りに聞こえるからな。でもお前は元から周りから浮いている。お前が一人で喋っていたとて、誰も気にしないだろう』
今日は血の臭いがすごい。
何か起こるのか。
それとも……またこの時期が来てしまったからなのか。
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