97人が本棚に入れています
本棚に追加
----------
空を見上げれば星が光る
視界の端で、流れる星
遥か彼方の山に吸い込まれるのは
風が通る音
虫が鳴く音
チリンチリンと鳴る鈴の音
そして
刀を引きずる音
「こいつも…違う」
刀を引きずる、ヒトの形をした者は呟いた。
キラキラ光る夜空と
キラキラ光る赤い地面
血なまぐさい臭いが辺りに立ち込める。深く息を吸えばむせ返るほどの臭いは、普通なら耐え難いものだった。
そんな中、ヒトの形をした者はその血の海を躊躇いもなく歩く。
歩くたびに血が跳ね、脚を汚す。
『こんな下等種ばかりでは、先が思いやられるぞ』
「黙ってろ。派手には出来ない。そろそろ人が来る。早く吸え」
そう言うと持っていた刀を血の海に突き刺す。
赤黒い血は刀に吸い込まれるように消えていく。
『まずいったらありゃしねえ』
「お前のより幾分かマシだよ」
この血なまぐさい臭いを消し去るような強い風が吹いた。
そして遠くから異なる足音が二つ。
ヒトの形をした者は、足音と逆の方へ進む。
その様子は、空の星しか知らない
……
…
最初のコメントを投稿しよう!