序章

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---------- 空を見上げれば星が光る 視界の端で、流れる星 遥か彼方の山に吸い込まれるのは 風が通る音 虫が鳴く音 チリンチリンと鳴る鈴の音 そして   刀を引きずる音 「こいつも…違う」   刀を引きずる、は呟いた。 キラキラ光る夜空と キラキラ光る赤い地面 血なまぐさい臭いが辺りに立ち込める。深く息を吸えばむせ返るほどの臭いは、普通なら耐え難いものだった。 そんな中、ヒトの形をした者はその血の海を躊躇いもなく歩く。 歩くたびに血が跳ね、脚を汚す。 『こんな下等種ばかりでは、先が思いやられるぞ』 「黙ってろ。派手には出来ない。そろそろ人が来る。早く吸え」 そう言うと持っていた刀を血の海に突き刺す。 赤黒い血は刀に吸い込まれるように消えていく。 『まずいったらありゃしねえ』 「お前のより幾分かマシだよ」 この血なまぐさい臭いを消し去るような強い風が吹いた。 そして遠くから異なる足音が二つ。 ヒトの形をした者は、足音と逆の方へ進む。 その様子は、空の星しか知らない …… …
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