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アフラレイルは記憶で見たままの姿だった。 私は妖畏を倒した者として、なぜか英雄扱いをされていたが心底不快だった。こいつらのためにやった訳ではないから。 アフラレイルに来て1番初めにやりたかったこと。 アフラレイルでまだ生きている妖魔に会いたかった。紫苑はアフラレイルの言葉を話す妖魔は、誰かを待っていると言っていた。 初めは妖畏のことかと思ったが多分違う。きっと……妖蛭を待っていたんだと思う。 国からはずれた静かな場所。 そこに妖魔が集まっていた。 その妖魔たちは全員言葉を話し自我を保ち、ただ静かに暮らしていた。 人間がいなかった頃のアルフみたいだった。 妖畏を倒したことを告げれば、妖魔たちは肩の荷が降りたのか、目に見えて緩んだ顔になった。 私には何となく分かったから。 アフラレイルに残り、人間が失敗して生み出してしまった妖魔を処理し続けてくれた妖魔は、きっと妖蛭の部下だったんだろうなと。 案の定、この妖魔たちは妖蛭が帰ってくるのを待っていた。 妖蛭の匂いがする私を妖魔たちは不思議そうに見つめて、私の話に耳を傾けた。 何があったのか、妖蛭がアルフへ行ってから何をしたのか、妖蛭はどうなったのか、私は誰なのか、全てを話した。 そして最後にやるべきことをする。 妖蛭の住んでいたキャッスルに向かった。キャッスルは殆ど廃墟のような場所になっていて、妖蛭の記憶とは大違いだった。 キャッスルで紫苑に案内されて、全ての元凶である実験室を壊した。 資料もすべて燃やし、跡形もなく壊した。 ここに来る前に紫苑と約束をした事がある。 それはアフラレイルをにするという事。 実際アルフには、何も知らない人が生きている。人間の国だと思い、他に国があることも知らずに生きている。 その人たち全員をアフラレイルに呼ぶことはできない。 ただ妖魔と人間が一緒だとまた問題が起きる。 だから私はアフラレイルの人間を殺さないことを約束して、アフラレイルの人間をアフルに移るように説得させた。 本当なら共存できると言いたいが、それはまた夢の話。 自我を持たない妖魔もまだ沢山いる。理解できない人が殆どだから。 だからこそアフラレイルは今残ってる妖魔たちに明け渡すように話を進めた。今残る妖魔たちは人間がいなければ特に何も問題なく過ごせる妖魔たちだから。 アフラレイルの人間は、アルフに渡れば色々と不自由を感じるだろう。最新の技術なんざないから。勿論アービターは残党を殺すのに利用するが、他の暮らしはとても貧しいものだから。 そこで生きることを全うしてほしい。 アフラレイルを妖魔に渡すなら、私はアフラレイルの人間は殺さないと約束した。
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