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何千年も殺さなかった妖畏を殺せた私のいうことを、聞かない者など誰もいなかった。
数日かけてアフラレイルの人間を集めてアルフへ送った。
アフラレイルに人間は残っていない。
これで全て終わった。
私と妖蛭の……そして長かった妖蛭の旅は幕を下ろした。
お前の記憶を見なけりゃ私は全員皆殺しにしていたかもしれない。
だけど私は妖蛭の生きたアフラレイルという場所も、妖蛭を慕う人たちも……妖蛭が人間も妖魔も愛していたことも全部知っているから。
だからこういう判断を下した。
アルフではアービターの施設を潰して都に住める人を増やす計画が始まった。罪滅ぼしとして働けと言えば、知識を持ったアフラレイルの連中はそれなりに役に立った。
気を緩ませれば泣いてしまいそうで。
全てどうでもいいと言ってしまいそうで。
だから常に気を張った。
最後までやり遂げると誓ったから。
「終わったね、全部」
全て終わらせた。
まだまだアルフには妖魔が残っている。それをどうにかするのはアービターの仕事だと思うけど私もできるだけ斬ろうと思う。
それ以外のことは終わったんだ。
そして全て終わった次の日、私は1日中涙を流した。
枯れてしまうほど泣いた。
お母様を失った時は、沢山泣くことができなかった。復讐の気持ちと、強くならなきゃいけないという気持ちで、泣いてる暇などはなかった。
憂いてもお母様は生き返らないから。
そして、椎名と風太と暁月の死。
初めてできた友を守れなかった悔しさ。
藍斗と凛だけは……必ず守ると誓った。
妖蛭が父親だと知り、妖蛭の過去を知り、父の偉大さを知った。
妖蛭がいなくなることなんて一度も考えたことがなかった。
私が死ねば妖蛭も死ぬ。死ぬ時は同じだと思っていたんだよ。
なのに先に逝くなんて、私は想像もしていなかった。
1日で私の人生全てのことを思い出して、藍斗と凛と夜虎に包まれながら私はずっと泣いた。18年間の想いが弾けた。
「ねぇ、笑ってよ。小春は笑ってる顔が1番だから」
「……うるさいな、お前は」
私よりも泣いている藍斗を見て、思わず笑ってしまった。何故私よりも泣くんだよ。
「泣いてても綺麗だね」
「お前、小春のことベタ褒めしすぎやろ!」
「確かに、小春様は可愛らしいです」
「なんか可愛いんだけどさ?ほんとに小春はどんな表情でも綺麗」
それが例え妖魔の大群の中でも血溜まりの中でもね。そう藍斗は言う。
「小春はいつも綺麗に笑うから」
だからずっとその笑顔をそばで見たいな。と私の手を握る藍斗。
「馬鹿ばかりで……困るよ」
いつから自然に笑えるようになったのか。ただこの3人の前なら私は、どんなことがあってもまた笑顔になれると信じているんだ。
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