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妖は綺麗に笑う
「凛、肉の調達は済んだのか?」
「げっ!忘れてたわ!買ったけど家で冷やしてる!」
「取ってきてくれなきゃ。小春様はお肉だと今日は機嫌がよかった。忘れたとなれば斬られるぞ」
「ちょ、夜虎さんも手伝って!山ほど買ったし1人じゃ持てへん」
「……仕方がない。小春様に声をかけてから行きましょう」
あれからどれくらい月日が経っただろうか。
今日僕たちは、みんなで集まって食事をしようと言われて小春様の家に集まっている。
そう。
ここは小春様と妖蛭様と小春様のお母様3人で住む予定だったあの家だ。
とても綺麗で海と山に面し、なんでも周りにある素晴らしい自然の場所。
「小春!肉の追加取ってくる」
「ん?あぁ、頼んだよ。少し今手が離せなくてな。夜虎!テーブルを動かすのを手伝ってくれないか?」
あぁ、お手伝いを頼まれてしまった。凛には1人で行ってこいと目配せしたら、ため息をついて走っていった。
家の中では小春様が机を持ってあたふたとしていた。
「藍斗は?」
「藍斗は今、春斗につきっきりだ」
「なるほど。お昼寝が終わったんですね」
「ほんと、誰に似たのか……散々暴れて死んだように眠るを繰り返す。もう少し大人しくしてくれないかな」
やれやれとため息をつく小春様は、もう母親の顔をしていた。
そこに泣き言を言って現れる藍斗。
「小春ーー!春斗がお母さんじゃないと抱っこされたくないって騒ぐ!」
「……押さえ込めばいいだろう」
そう言いながらも小春様は小さな可愛い子供を抱き上げて肩に乗せ、そのまま机の設置に取り掛かる。
やいやいと小春様の上で暴れるのは、小春様と藍斗の子供の春斗だ。
あの日以来全員が目まぐるしい日々を送っていた。1年は妖魔の残党をみんなで処理して、その後ぼくは旅に出た。
小春様が守ってくれたこの世界の人に触れたくなったから。
小春様以外の人間なんて大嫌いだったけど、藍斗や凛に会って変わったから。
凛は解散したアービターの何人かを引き取り、小さな訓練所で刀の扱いを教えている。数は確実に減ったが、妖魔の完全なる排除はまだ出来ていないから。
小春様は藍斗に共に生きてくれと頼まれたからと言い、藍斗の言葉を素直に聞いて藍斗のそばで過ごしていた。
2人はよく喧嘩まではいかないが言い争いをしている。そして結局藍斗が負けている。
微笑ましい光景だ。
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