妖は綺麗に笑う

4/5
98人が本棚に入れています
本棚に追加
/455ページ
藍斗が肉を受け取り、家の前につくった調理場で焼き始める。 小春様は刀を持って家の外に出た。 もう殆ど妖魔もいなくなり刀を使う機会は無くなった。でも妖蛭様が宿る愛刀は、小春様は常に持ち歩いている。 『小春、久しぶりに賑やかなのもいいな』 「そうだな。やはりこいつらといると穏やかな気持ちになれるよ」 『墓参りしよう』 「あぁ。会ってやって」 家の広い敷地のなかに立つ、3つのお墓。 小春様と藍斗と凛の訓練所での仲間の墓。故郷に骨を返すつもりだったみたいだけど、妖魔の襲撃でそれぞれの故郷も無くなっていたりしたため、小春様は寂しいだろうからと言いここに墓を作った。 刀を抱えたまま小春様はお墓の前で手をあわせる。 春斗は大人しく座り小春様を見ていた。 そこに藍斗と凛もやってきて一緒に手をあわせる。 「さて、こいつらの分の肉も食うか」 小春様は再び春斗と刀を抱き締めて机のある場所まで戻っていく。 妖蛭様が身体から消えて小春様は普通の人と同じように食事を取るようにった。あんなに肉は嫌だと言っていたのに、よく食べるようになってなんだか嬉しかった。 小春様の後を追いかける藍斗が何かに躓きすっ転びそうになる。 それを小春様はキャッチした。 「鈍臭いな。顔から突っ込むな」 「へへ、ごめん、ありがとう」 かっこよく片手で藍斗が転ぶのを阻止したが、左手には春斗を抱えているため、刀を持っていた右手で藍斗をキャッチした。 その際小春様が妖蛭様を放り投げるから…… 『お前!!父親よりも小僧が大事だというのか!!父親を放り投げるとは何事だ!!』 「うるさいな!反射だ、反射。文句があるなら転びそうになった藍斗に言え」 藍斗を助けるために刀を放り投げた小春様と妖蛭様の言い合いがまた始まる。 とても賑やかで幸せな空間。 「いつになっても小春の方がカッコいいんだけど、どうにかならないかな?」 小春様のおかげで顔から地面に突っ込まずにすんだ藍斗が隣に来てそう笑う。 「小春様よりかっこよくなるのは不可能な気がする」 「もー!夜虎さんまで追い打ちかけないでよ!」 「小春様は特別な人だから」 妖蛭様が身体から消えても小春様の強さが変わることはなかった。妖蛭様が言っていた通り、小春様の強さは小春様の努力からくるものだった。 そんな小春様はどこにいても目を惹く。
/455ページ

最初のコメントを投稿しよう!