妖魔のいる世界

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この世界には人と妖魔がいる。 俺たちが生まれるもっと前…… 妖魔と人が共存していた時代があったそうだ。 今この現状からは考えられないことで、今を生きる人たちは誰も信じていないと思う。 あんな残虐な妖魔と……共存なんて出来るわけがない。 俺の名前は藍斗(えいと) 家族は居ない。いや…家族みたいな人達はいる。奏多(かなた)亜子(あこ)は俺の家族だ。 一つ年上ってだけで、俺たちの兄貴的存在の奏多。わがままで気が強くて…でも心配性で優しい妹みたいな亜子。 俺たちは妖魔に家族を殺された。 俺の父さんは、アービターに所属して、妖魔狩りをしていた。 アービターは、妖魔と戦う組織だ。 妖魔は…人を喰らう。 人間は奴らの口に合うらしく、奴らはただ喰いたくて喰っている。 そしてその中でも力のある妖魔は、喰った人に成りすませる力を持つ。 喰って欲を満たす妖魔と、人間になり切ろうとする妖魔がいる。後者が厄介だ。 人間だと思っていた人が、妖魔の可能性があるなんてことも、あり得る世界なんだから。 妖魔と人は違う。 見た目も声も臭いも…全部違う。 だけど、ヒトの形をした者…人間に成りすましている妖魔は、見た目や声や臭いでは分からない。でもそれも…妖魔だ。 妖魔が憎い。 俺たちの家族を奪い、村を奪い…希望も奪った。 だから俺たち三人は、都にやってきた。 ここなら妖魔の被害もまだ少ないだろうし、ましてや生きるための衣食住も仕事も整っている。 そして俺は、父さんと同じアービターに入ると決めていたのだ。 特殊な訓練を受け、妖魔と人を瞬時に見極め、妖魔を殺す。そして人の文明を守る仕事だ。 共存した過去なんて…過去にすぎない。 もうこの時代では妖魔と人は相見えることはないだろう。
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