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「仮想妖魔……誰があそこまで妖魔の動きを事細かく再現できると思う?技術だと言われたら仕方がない気もするけど……
妖魔が腕を振り上げる時の細かい動きに、斬られた時ピクリと動くその筋肉。すべてがリアルに表現されていた。
まるで妖魔を知り尽くした誰かが作ったみたい」
自分でそう言って恐ろしくなった。
これだけ妖魔を斬った私でさえ、妖魔のこと細かい挙動を再現しろと言われても難しい。
ましてやアービターにそこまで強い戦士もいない。
紫苑や斗南があの施設の制作に携わったと言うなら、分からなくもないが……
あまりにもリアルすぎる。今を必死に生きている私達にとって、こんな細かい動きまで再現する物を作るのは不可能だ。
勝てもしない人が殆どなのに。あそこまで細かく真似て作るなんて、あり得ないんだよ。
『お前は相変わらずいい読みするなぁ』
「……最低でも、この世界に住む人が作った物じゃない」
こんなSFみたいな話好き好んでするつもりもないが……私にとって、この最新の技術に囲まれたこの空間は、妖魔よりも不気味だ。
『この世界じゃない場所ってなんだ?』
「それは知らない。そんなもの無いと思いたいが」
右腕をマッサージしながら妖蛭と話す。
きっと……コイツは何か知っている。妖蛭が妖魔王だった時代は長い。コイツは妖魔としてこの世界に長く滞在している。何か知っているはずなんだ。だけど絶対教えてはくれない。
私の思考が妖蛭にも伝わるのなら、妖蛭の思考も私が知れたらいいのに。
『とにかくお前は、ここでの訓練を乗り切ることを考えろ。今のままじゃ浮きまくって終わるぞ』
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