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なぜ妖蛭にも諭されなきゃいけないんだ。
でも言われてることは分かる。
「キャラ設定を間違えたか」
ぽつりと呟いた。か弱いふりをしていた方が都合がいいと思ったが…難しいな。
あまり目立ちたくないのに、ついつい興奮して動いてしまった。
『戦いが好きな狂った女設定にしておけ。お前の性格上、か弱いなんて死んでも無理だ』
妖蛭がそう言って答えようとした時、トイレのドアが開いた。
えっと…
「ご、ごめん!でも小春遅かったから。倒れてたりしたら怖いなって思って」
突然現れた藍斗は、トイレのドアを開けたことに対しての謝罪だろうか。あたふたしながら視線をそらす。
そのあと何も言わない私をみて、大丈夫?と不安そうな顔をしている。
そうか。結構時間が経ったのか。
「小春?何処か怪我した?」
「…いや、大丈夫」
「そう?じゃあ行こうよ。俺たち1回ずつ試合の映像見たんだよ」
小春、カッコよかったな。
何の疑いもなく純粋な視線が向けられて少し心が痛む。かっこよく映るのか。お前達の目には……バケモノに映らないのか?
「…ねぇ」
「ん?どうかした?」
自分が妖魔なのかもしれないと悩んだことがあると言った藍斗。
大丈夫だよ。妖魔はもう、そんなことさえ思わないんだ。自分が妖魔なのか、悩むことさえなくなるんだ。
「私は、藍斗の目にどう映る?」
そんな風に悩んだ藍斗は、私のことは妖魔だと…疑わないのだろうか。何も気にならないのだろうか。
『小春』
妖蛭の声でハッとして口を閉じる。
危ない。つい、変なことを口走りそうになった。
妖蛭の声は私にしか聞こえない。勿論藍斗には聞こえない。
妖魔が身体の中にいる私は
バケモノなのだろうか。
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