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そんな深い問いだと思わなかったのか、藍斗は答えた。
「可愛い女の子」
「………は?」
「は?って酷いな。小春が聞いたんだろ?俺の目にどう映るって」
何を言っているんだ。
そんな話をしている訳じゃないのに。
いや、勝手に色々考えていたのは私か。
「でも強くてかっこいいなって思った」
「かっこいい?私がか?」
「話し方は諦めたの?」
藍斗はクスクス笑っている。
諦めたよ。もう無理だとわかった。
「女の方が強いと、男は嫌がると思って」
「うそ、そんな理由?」
大丈夫、安心して。みんな小春に色々教えて欲しいって騒いでるくらいだから。
藍斗はまた笑っている。
よく笑うな
「でもさ、小春は、辛くない?」
「……何が」
歩いていた藍斗は立ち止まって、背の低い私の顔を下から覗き込んだ。
藍斗の名の通りの藍色の髪がフワリと揺れる。
「強い人は、それだけ沢山辛い経験をしてるから」
辛いことがあったら相談してね。頼りないけど。藍斗はそう言って再び歩き出した。
間抜けな顔をしている。もちろん私がだ。
今私は…どんな顔をしている?
強い人は、それだけ辛い経験をしている、か。そんなことを言う奴がいるとは思わなかった。
でも、私が本気で戦う姿をみたら、きっと藍斗は恐怖に染まるだろう。
こんなことを言ってくれる奴の前で、そんな姿は見せたくないなと少し思った。
「小春!おそいで!腹でもこわしたんか?」
「いや……まぁ、うん。少し疲れた」
凛は邪魔になったのか、深緑の髪を束ねている。その方がいい。あの長髪は、妖魔に引きちぎられる。
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