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刀光とは、いわば非公認アービターみたいなものだ。そんなにいいものでもないが。
アービターは人数が足りていない。都から離れすぎた場所には誰も助けは来ない。
襲われる中でも生き抜いてきた、しぶとい輩たちが集まる集団。それが刀光だ。
「刀光って…」
まぁいいイメージは無いな。
奴らは善人ではない。
妖魔が襲ってくるから殺しているだけ。誰か守りたいものが居る訳でも無い。
だから刀光と名前のついた集団でも、関係はドライなものだ。
戦いの時だけ、全員楽しそうにする、イカれた集団だよ。
『死ぬ時は、自分が弱かった時』
刀光の頭がそう言っていた。
奴らは戦いで死ぬことに、何の恐怖もない。むしろ本望だと思っている。
「私を見て、戦い慣れてると思ったのならきっと、刀光に居たからだろう。後ろでその姿を見てきた。動き方が分かる。それだけだ」
刀光に居る時は、夜虎と一緒に、程よく妖魔の相手をしていた。バカが多く、自ら妖魔の巣に飛び込む頭のおかしな奴もいた。
数年刀光に留まった。我ながら長居をしたと思う。
刀光に長居をした理由は、刀光の奴らが妖魔の情報を沢山持っているからだ。
あともう一つ……1番大事なのは、奴らは他人に興味がない。妖魔を狩ることだけに興味を持っている。
何処の生まれで、誰から剣技を教わったか、夜虎との関係はどうなのか、誰1人聞いてこなかった。
あくまで他人。
戦いの場を共にするイカれた仲間。
とても楽で、そして妖魔の情報も早かった。
ほんと好都合の集団だったよ。
「俺、一回だけ刀光と妖魔倒したことあるわ」
「そうか。私も居たかもしれないな」
「かもな。何となく小春は野生って感じしたし、ちょっと納得いったわ」
ところで、話し方変わってない?どないしてん!と凛にも笑われた。
もうこれでいいんだ。楽だ。か弱い女は向いていなかったよ。
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