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「なるほどね。刀光か…また珍しいところにいたのね。強さの秘密、洞察力には納得できたわ」
鳴海の目はどうも私を探っているように見える。
程よく戦えるくらいにしておきたいから、これ以上何かできるところは見せたくない。
とくに、この女の前では。
「俺、刀光に…助けてもらったことある」
1番静かな暁月が喋り出した。
まぁ、助けてもらった、は少し違うかもしれないけど。妖魔を斬ってくれることは斬ってくれるよ。
嫌な顔をされると思ったが、刀光の話をしてもみんな普通の反応だった。
その後も、繰り返し映像を見ながら各々の改善点を鳴海が話していた。
さすがアービターとでも言っておこうか。
よく見えてる。
この1戦でそれぞれの動きの弱点、強みを言い当てて改善点まであげている。この女も強いんだろうな。
「小春は…」
私の番か。
「利き手はそっちで合ってる?」
ドキッとした。
おかしな仕草を取ったか?
「小春ちゃん、左手怪我してるから使えないよ」
椎名がそう言ったが、火傷の痕は嘘だ。
包帯が巻かれた左腕には、噛み跡がある。
妖蛭に噛まれた時の傷が消えない。
「そう。なんだか違和感があってね。動きと刀がチグハグなのよ。左で刀でも握れば上手くいくのかしらって思っただけよ」
「……そう。左は右よりうまく使えない。火傷の痕が擦れて痛いんだ」
「わかった。あなたは動きとしてはかなり優秀よ。刀光の中で、あまり実戦はせずに、ずっとみんなの動きを研究していたのかもしれないわね」
そんな感じということにしておこう。
でも10日もあったら、それなりに右手も使えるようになりそうだな。
両手が使えるに越したことはないからいい機会だ。
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