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俺の父さんは優しかった。そして強かった。
ある村の救出に行った時に妖魔に殺された。俺が八歳の時だった。
今のアービターも強いんだろう。
しかし…団長殺しの噂が本当ならやり方は嫌いだ。
殺す必要もなかっただろう。そこまでして力を見せつけ、アービターに入る理由はあったのだろうか。
いや…
こんなこと考えても無意味だ。俺はまだ入団できる入口にさえ立てていないのだから。
「まずは作戦立てなきゃ…」
奏多も亜子も巻き込みたくないから、二人にはアービターとは無関係でいて欲しい。でも何が何でも付いてくると言う。困ったな。
問題は山積み。
亜子と言い合いなんていつも通りだ。そろそろ奏多と亜子の元に戻ろうと、元来た道を引き返している時、都の中心部が騒がしいことに気づく。
なんだ?なにかあったか?
都の方をみると、白い煙があがっていた……
「奏多!亜子!」
離れてはいけなかった。妖魔の出現率はさがったが、0ではない。奏多も亜子も…敵うわけない。武器を持っているのは俺だけ。どうして離れた!?
待ってろ…!
必死に足を動かし都へ向かう。ひらひら舞い落ちる桜並木を通り抜けて、逃げてきた人々の間をぬって、騒がしい方へ走る。きっと妖魔だ!!
路地を抜け、二人がいるであろう宿のある建物に近づく。
「亜子!こっちだ!」
奏多の声が頭上からして見上げると、屋根に取り残された亜子がしゃがみこんでいる。
そこに反対の屋根から奏多が手を伸ばす。
亜子を見ると…
近くに
妖魔がいた
皮膚はベトベトして、肉はなく、筋肉と皮だけのソレは、言葉にならない声をだし、呻いている。
ヒトの形をしていない。
ていうことは、下等種だ!!
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