97人が本棚に入れています
本棚に追加
下等種なら、どうにかならないか?
そう思い屋根に登ろうとした。だけど、ダメだ。間に合わない。伸ばした手は届かない。
奏多の声もする。
亜子…亜子…亜子…
「 やめろーーーー! 」
非力さが憎い。何も考えずに2人から離れた自分はもっと憎い。
妖魔の手が亜子のすぐ足元に振り下ろされた。
亜子はバランスを崩し恐怖でその場に尻餅をついてしまった。
妖魔の手が再び振り上げられて、目の前の光景から目を背けようとした時、それは起こった。
「 え? 」
亜子の側にいた妖魔の首が、一瞬で無くなったのだ。
それと同時にガクンと力が抜けたかのように、動きが鈍りフラつく妖魔。
何だ?何が起こった?
ザクッ
少しして、俺の背後で鈍い、何かが刺さる音がした。
怖い
振り向くことができない。
シーンと静まりかえる辺り。そして少し離れた所から誰かがこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
俺は腰を抜かし地べたに座り込み、動けないでいる。怖い。何に対しての恐れだ?
だんだんとその人物が近づいてきた。
「 兎… 」
歩いてくる人は、兎の面を被ってこちらを見下ろしていた。
咄嗟に思ったんだ…
殺される!!!と。
動け!動け!俺の足…動け!
必死に力を込め、ようやくその場から這うように動けた。
怖い…逃げなきゃ。無様に地を這い少しでも距離を取る。本能がそう告げているんだ。逃げなきゃと。
そんな俺には目もくれず、俺の横を通り過ぎて背後に向かう。
あぁ…今やっとわかった。
この面の人が
妖魔を殺したのか。
地面に妖魔の頭といっしに突き刺さる刀を、躊躇いもなく引き抜き小さな声で呟いた。
「 こいつも違う 」
最初のコメントを投稿しよう!