25人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
舟はもと来た砂浜につこうとしている。誰もいない砂浜に友一郎は舟を上げて、潜は友一郎のあとについていく。潜が行けるのは海水に濡れた砂のところまでだが、友一郎は日に焼かれた白い砂の上を、熱さなどものともせずに、舟を肩に担いで森の方へと歩いていく。それがお決まりの流れだった。
ところが、今日はなぜか砂浜に人が一人待っていた。彼は、
「潜くん!」
と砂浜から波打ち際までかけてきたが、友一郎が行く手を遮った。
「潜に何か用ですか」
友一郎は舳先を相手にむけて突き出した。目の前に立ち塞がられた方は銛でも突き出されたかのように「ひっ」と情けない悲鳴を上げ、おどおどと後ずさった。
最初のコメントを投稿しよう!