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仲たがいをしたわけでもないのに、知らず知らずのうちに、交流が途絶えていた。互いに都会での多忙な暮らしにのまれてしまっていた。いや、そんなのは言い訳だ。友一郎は寝不足で回らない頭で考えた。あいつはいつだって上手くやっている、と、親友の虚像を自分は信じ過ぎた。だから信頼されなかったのだ。大翔にとって自分は、辛いとき、悲しいときに連絡を取れるような相手ではなかったということだ。親友だなんて、思い上がりもいいところだった。
結局一睡もできないまま、朝になってしまった。重だるい身体を引きずるようにして、友一郎は一階に降りた。祖父はとっくのとうに仕事に出ていた。
いつもなら砂浜に出ているころに、彼はあり合せのもので朝食にした。砂浜に行ってもフェリーの時間には間に合いそうだったが、いつも通り潜に会ってとりとめのない話を聴かされると、出かける気が挫けてしまいそうだと思ったのだ。
洗面所に立ち、髭を剃る。シェービングムースを顎に塗りながら、潜はなんと言うだろうかと考えた。髭のなくなった顎を面白がるか、残念がるのか。
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