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パリピ猿集団にも目を付けられているその男は、夏にあいつらと海に行ったらしい。ボス猿のインスタを見たときに中心付近で突っ立っているこの男を見た記憶がある。
しっかりと染め上げられた髪はこの田舎には合っていないような気がする。それこそインスタで見る准くんのようなファッションセンスだし、パリピにおモテになる理由もわかる気がした。正直私にはキラキラすぎる。
「あ、うん……。そう、だけど」
「あー、橋谷たちの?」
橋谷、と言われて、今更にボス猿の名前を思い出した。橋谷葵だ。昭和チックな名前の私とは違って、名前までいまどきでほんと消えてほしい。マジ嫌い。
同情とも無感情とも取れるような顔に曖昧に笑えば、会話が止まる。私の顔をなおも見つめているその男の言わんとしていることに今更に気が付いて口早に呟いた。
「あ、ごめん。東くんのも書こうか?」
単純に自分のやつも依頼しようとしたのだろう。出欠の紙をもらうために右手を差し出せば、虚を突かれた様な顔をされた。
「いや。俺は良い。ってか、別にそれ、書かなくてもいいんじゃね? 出ないやつの自業自得じゃねえの?」
ごもっともな言葉が耳に突き刺さる。当たり前に言ってのけたその男に何も言えなくなった。いや、何も言えないのはいつものことなのだろうけど。
どうしてパリピはいつでも自分の意見が正しそうに言葉を発するのだろう。自分の価値観こそが正解だと言わんばかりに押し付けて、強要してくる。気持ちが悪い。
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