妄想アイデンティティー

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「汐見がアイツらの単位を必死こいて何とかしてやってる間に、アイツらはどこ行ってんだろうな」 まるで知った様な口調だった。それは、暗に私が講義を受けている間にあの集団がどこかで遊んでいたことを示唆しているようだった。馬鹿らしい。それくらいもう何万年も前から知っていた。急激な苛立ちが襲い掛かってくる。 「正直に言えば? 自分の単位くらい自分で何とかしろよって」 それが言えないがために苦しんでいることに気付けないから、こいつはパリピなんだろう。根本的に思考回路が違う。生きている世界も、何もかも違う。 自身の思う正論を当たり前のように振りかざすことのできる人間がこの世にどれだけ多くいると思っているのだろう。だからこいつは私の行動に苛立っているのかもしれない。 クソどうでも良い。 「それ言える人間なら今ここで、この出席票捨ててるでしょ」 喉の奥で小さく呟いた私の声は、東の耳に届くわけもない。
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