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埋没パーソナリティー
自宅に着いてすぐに2階へと駆け上がる。両親は常に帰宅の遅い人間だから、娘の私がこの時間に何をしているのかなんて知らないだろう。
服を着替えてほとんど化粧をしていなかった顔を作り直した。普段はつけない付け睫まで瞼に押し付けて、完璧な自分をプロデュースする。
うまく照明が当たるように調整して肌がきれいに映るアプリで写真を撮る。
必ず顔は斜め上から、上目使いを撮る。
微妙にアングルを変えれば全く違う写真に見えるようになる。100枚以上を撮ってその中から厳選して1枚を選んだ。片目を瞑って、ウインクをしている画像に“この間買ったシャドウ超お気に入り”とコメントを付けて投稿することにしていた。
そのアイシャドウを購入したのはもう2年前になるし、何なら別にそんなに気に入っていたものでもない。メインは私だ。クソな現実の中で、唯一私がヒロインになれる場所。
ただし観客はゼロだ。
真剣に画像を編集しながら、奥に置かれている鏡と目が合う。鏡に映った自分は可愛くない。
もとがブスなのだから当たり前だ。ブスが化粧ごときでその存在を帳消しにできるわけがない。帳消しにできないからブスだ。
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