埋没パーソナリティー

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当たり前のように東が私と山本拓哉の間の席に座る。そのまま当たり前のように上体を机に寝かせた。 三人掛けのテーブルがいくつも並べられているこの教室でわざわざこのクソ狭いところに割って入ってくるわけがわからないが、それ以上の謎は、何故自分の座る席の横にこいつらが座るようになったのかだ。 連絡先を交換してから東が隣に座るようになった。特に何の好意的な意味もなく、ただ私をノートにして存分に眠るためだ。 山本拓哉は東とセットになってついてきた。 特段いい印象のある人間だったわけでもないが、山本はウザいくらいに世辞が得意だ。 初めて会話した日に聞いた「字が綺麗だね」は彼にとっては「おはよう」とか「やっほー」レベルの常用語らしく、そのことに何かを感じる方が間違いだと知った。 特に馬鹿にされたわけでもないとわかっただけで安心できる。あれは山本流の挨拶だ。 その言葉が悪意を孕んだものではないと思っただけで、山本が良いやつに見える。その顔で「可愛いね」と言われたらどんな人間でも信じたくなるだろう。つい少し前までイケメンの「可愛い」を信じられないと思っていた自分が消えかけている。
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