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意外に正義感の強い東はなんだかんだ言いながら山本に優しくしているし、きっとそうだろう。現に私が東のノート係をやっていなければ、山本と会話する機会なんて一ミリもなかった。
毎度のこと面倒だと思いながら友達のためを思って東がそこにいるのだと思うと笑えた。
ただノート係をやってもらえるからラッキー程度にしか思っていないと考えた方がしっくりくる。
永遠に続きそうな思考の波が途切れる。何かの振動を感じてポケットから携帯を取り出してみれば、山本からのメッセージが届いていた。
“ひまー”という言葉のあとに構ってと書かれたスタンプが続く。暇だとアピールしたい相手なのだと思うとまた頬が勝手に緩んでくる。ちらりと横を見れば、思い切り眠る東の向こう側でこちらを見つめながら机に伸びている山本がいた。
目が合うと、小さく笑われる。その手元にあるルーズリーフは当たり前に白紙のままだ。
“ノート、ちゃんと取りなよー”
小さく笑って打ち込めば、可愛らしく眉を寄せてくる。“だって汐見さんのノートの方が絶対きれいなんだもん”と、またかわいらしいスタンプと一緒にメッセージが届いた。
山本はいくつのスタンプを持っているのだろう。いつ連絡を取り合うときも違うスタンプを使っている。
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