埋没パーソナリティー

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黙々と書き進めてもう一度横を振り向けば、拓哉が小さく寝息を立てていた。結局寝てしまったらしいことに小さく笑える。子どもみたいな男だ。 無邪気で、可愛らしい。その癖にちゃんと男で、誰からも好かれている。人気者で、明るい。 全ての陽の要素を兼ね備えた拓哉の寝顔のあどけなさを知っていると思うと優越感で笑いが止まらなくなりそうだった。 後で寝顔を撮った写真を見せて拓哉を笑わせるために、携帯を手に取った。そのままカメラを起動させようとして、通知に指先が止まる。 インスタグラムからの通知は、水無瀬准が何かを投稿したという知らせだった。 酷く懐かしい気分になる。そういえば、久しく自撮りの画像をあげていない。モバイルバッテリーも一つしか持ち歩かなくなった。 不必要になったのだ。 インスタを見ている時間なんてないし、いつまでも来ない更新を待つのは退屈だ。それよりも現実の方がよっぽど楽しい。ごめんね准くん私の想いは終わりました。 悲しんでいるかもしれないけどもうどうでもいい。気まぐれに通知をタップして、インスタの投稿を覗く。
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