埋没パーソナリティー

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いつもと同じくコーディネートがアップされていただけだった。水無瀬准はそこに“来週から各地でイベントあるよ~”という文字の下に、いくつかの地域でのイベント日程を書き記している。 その中に、この街に隣接した地方都市の名が書き込まれていた。丁度二か月後らしい。 以前の自分なら、今すぐ飛び上がりたいほどに喜んでいた事だろう。 まさか自分が住んでいる土地に水無瀬准が来てくれるとは思ってもいなかった。それももう、どうでもいい、どこか別次元の有名人の告知のように思えた。行けたら行ってみようかな、レベルだ。 運よく5分前の投稿を見つけられたみたいだが、もうすでに87件のコメントが埋まっている。皆水無瀬准からの反応が欲しくて、欲しくて欲しくてたまらない承認欲求のガチ恋キモ女どもだ。 可哀想だ。心底可哀想で、ホーム画面に戻った。 あの頃の私は可笑しかった。必要とされたい感情が強すぎたのだ。ようやく普通になった。普通の女の子になって、普通に恋愛する。拓哉と。拓哉の方を見ようとして、腕を枕にしたまま伏せている東と視線がぶつかった。 無言のまま私をじっと見上げている。その瞳に耐えられずに「なに?」と尋ねれば、「別に」と返される。その瞳の奥が常に私を冷静に見つめているから、目が合うと落ち着かない。
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