埋没パーソナリティー

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見つめられるだけで心が不安になるのだから、私は本当に東が無理だ。無理だと思いながらも、拓哉の親友なら何とかやっていくしかない。 曖昧に微笑んで「そう?」と囁いたら、思い切り眉を顰められた。 「下手な作り笑いやめれば」 簡単に吐かれた暴言に息が続かなくなりそうになった。 こいつと居ると突然背後からナイフを突き立てられるような感情を何度でも掘り起こされる。ザクザク刺してくる男は特に申し訳なさそうな顔をするでもなく、嘲笑するでもなく私を見つめていた。 寸分の狂いもなく私の急所を突いてくる。 その言葉に何を返せばいいのかわからなくなって、苦し紛れに「ごめん」と言った。なぜ謝っているのかわからない。私はお前のクソ愛想の悪い態度でも何とかそれなりの仲になろうと奮闘しているのに、こいつはそのすべてを水に流そうとする。 無理すぎる。きっとお互いに無理だと感じているのだろう。こいつは私が自己主張一つせずに橋谷たちの出席票を代返していることにすら嫌悪感を覚える男だ。 嫌ならやめればとか無責任に口に出して、できない私に呆れている。拓哉とは大違いだった。 拓哉は毎回毎回パリピクソ女どもの代返をひとつひとつ丁寧に書き上げている私を見て「偉いね」「友達思いで優しいね」と言った。その性格を、少し東にもシェアしてあげた方が良い。
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