不可逆ディスコグラフィー

埋没パーソナリティー

理由は単純に、拓哉が本名のままでＳＮＳを登録しているからだ。

パリピあるあるだと思った。やつらは自分の名前をネットに垂れ流すことに抵抗がないし、顔を晒すのだって、何の危機感も持っていない。

名前と顔がわかって、なおかつ特定できそうな地域の名前や画像をあげていれば何が起きてもおかしくない世界で、あいつらは本当に何も感じずにそれをやっているのだ。

拓哉は人の顔こそ載せないものの、実名でＳＮＳのアカウントを作っている。だから、例えば同じようにＳＮＳをやっていて、拓哉と相互フォローの人間の中にネットリテラシーのない馬鹿がいれば、拓哉がその日どこで何をしていて、誰と何を笑い合っていたのか分かってしまうのだ。

本人に「どこいくの？　誰と何して遊ぶの？」なんてわざわざ訊く必要もない。

拓哉の最新の投稿は28分前のものだった。

内容は“今からラウワン～”だ。それだけでどこにいるか特定できてしまう。このクソ田舎にある商業施設などたかが知れている。さらにその投稿に返信をしているアカウントに飛んで、あっさり拓哉の画像が入手できる。

大きなボウリングシューズを顔の横で持って、あからさまに驚いたような顔をしている。それだけの投稿にまた無数のいいねがついていた。