不可逆ディスコグラフィー

埋没パーソナリティー

思考する前に画像を保存する。こうして入手した拓哉の画像がすでに１０枚以上あった。

寝る前に見つめれば簡単に幸せになれる。

私と同じようにその画像を保存している人間がいると思うとやっぱり気分が悪かった。こうして見ているのと同じように彼を見つけて好きになってしまう女がいたらどうしたらいいんだろうか。

拓哉は優しいから、絶対に邪険に扱ったりしない。だからこそ嫌だ。

１５件以上来ているコメントをひとつひとつ見て、その中に“ごめんあと３０分でつくよー”というものがあることに気付いた。そのページに飛んで、絶句する。

「は？」

当たり前のようにピンで撮られた自分の写真をアイコンにしているその女は、奇しくも拓哉と同じ投稿をしている。“今からラウワン”という言葉の尻に赤いハートの絵文字が付いている。また何人ものいいねがついているのを見て、思わずいいねした人間の一覧に飛んだ。

その中に当たり前のように拓哉のアカウントがあるのを見て、携帯を放り投げた。

何で、何で、こいつと一緒に居るんだろう。

よりによって何でこの女なんだろう。苛立ちが暴走して叫びだしたいくらいだった。無意識に頭皮を掻き毟る。指先が地肌に擦れる音が煩い。視界をちらつく黒髪が鬱陶しい。もう全部ウザい。