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シュールな妄想に笑いながら、勝手に私の席だった場に座り込んでいる橋谷を見て笑みが終了した。
あいつはこっちに気付いたりしない。
惨めだから、席から一番遠く離れた後ろの席に座った。ペンもルーズリーフも教材も何もない。ただ座ってぼけっとしていれば、誰かが右端に座った。顔をあげる前に東だとわかってしまった自分がなぜかおかしい。
私の席が空いていなければ、東も席に戻れない。ただそれだけのことだ。私を追いかけてくれたなんて思わないし、思いたくない。もう山本の経験で痛いほど学んだ。
当たり前のように横の席で机に突っ伏している東を確認してから携帯を取り出した。通知が来ている。ミチコからのコメントだった。
“逃げても良いんじゃない? でも、きっと待ってくれてる人がいるよ”
わたがしみたいに甘くて優しい人だと思った。思わず泣きそうになって、こらえる。近くて遠い。どうしようもなく近寄りたくて、近づきたくないひと。
コメントに初めて返信を打った。
“多分待ってくれてる人はいなかったけど、気付いてくれる人がいた。ミチコさんありがとう”
好きが爆発しそうだ。
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