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毎日違うレパートリーで妄想のジェットコースターを乗り回している。ある日は私が准くんに追いかけられる設定で、ある日は准くんの浮気を許す設定。
ちなみに昨日はそもそものトラウマになった幼馴染の女の子が私だという設定だ。
全て鮮明に再現できる。
鮮やかな色彩の中にいる彼はいつも笑顔だ。私がすきで仕方がない准くん。私を想ってどこまでも追いかけてくる准くん。私に欲情して襲い掛かってくる准くん。准くん。准くん。准くん。
「あー、あー、すき」
7畳の部屋に反響する。瞼を開けたまま別世界に思考が飛んでいた。
指先にしっかりと握られているスマホは既に熱くなっている。このまま壊れてしまいそうだが、壊れたことは一度もない。これが壊れたら、私は心臓が止まってしまう。
はぁ、とため息を吐いて、彼のページをもう一度開いた。既にいいね数が200件を超えている。
彼の投稿のコメントはたったの一言「今日もお疲れ様ー。明日も仕事だー」だった。
それだけの言葉に200人が画面をタップしたのだと思うと気が狂いそうになる。どうして彼は私だけのものにならないのだろう。
いくら考えても、現実は私の思い通りにならない。
意味不明だ。
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