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全てがどうでもいい。私の嘲笑するような声を聞いた東がグラス一杯の水を差しだしてくる。そんな気遣いが私を惨めにさせるだけだってどうしてわからないんだろう。
「面白かった?」
「は?」
「音痴の癖に一番初めに曲入れて、結局歌えないまま逃げ出して、トイレでゲロ吐いてるってマジウケない?」
言いながら惨めさに笑えてくる。どうしようもない。自分が嫌いだ。嫌い過ぎて、受け入れる言葉が見つからない。
「何がウケるんだよ」
「え、皆ウケてたじゃん」
「俺は笑ってない」
知るかよ。あそこで助けてくれないのがすべてだ。私の中で地味に良いやつになりかけていた東がこちらを睨んでいる。どうして私がそんなふうに見つめられなければいけないのかわからなかった。
傷つけられたのはこっちだ。どうして私が加害者みたいな顔で見てくるんだろう。
「もう別に笑ってくれた方がマシだわ。どうせただの空気女だったし。お笑い芸人に昇格じゃん。めでたー」
「お前本気で思ってんの?」
「本気で思ってたらなおさらウケるよね」
「何が言いてえんだよ」
「東くんこそなに? ここまで来て何が言いたいの? 馬鹿みたいな私を笑いに来たならそうしたらいいじゃん」
「お前マジでクソだな」
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