陶酔サイバーシティー

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嗚咽のように漏れる声に、自分が泣いていると知った。絶対に見せたくないものが全て剥げて、みっともない本心が露呈している。 ぼろぼろと落ちる水を見た東が微かに表情を濁らせている。動揺しているらしい。それももうどうでも良くて、トイレに落ちた自分の涙を見つめた。惨めだ。惨めで息苦しくて仕方がない。 それは、たぶん、東の言葉が全部、ただしいからだ。 思えば東は一貫して私に本心を言わせようとしていた。口調がきつすぎるだけなのだろう。 「おい、泣くな」 心底困ったような声に不謹慎にも笑ってしまう。ミチコの言う通り、この世界にも、私なんかを見てくれている人がいたのかもしれない。東はたぶんどうしようもないおせっかい野郎だ。 「ご、めん……、ご、めん……、きも、ちわる、くて……、ごめん」 気持ち悪い。自分が嫌いで吐きそうだ。全部正しい。全部その通りだ。だから苦しい。私はどうしようもないダメ人間だから、どうにもならないのだと気づかされる。 途方もなく苦しいことだった。ごめんごめんと呟く私に、東が黙り込む。あまりのキモさに声を失ったのだろう。そう思うともう、苦しすぎて消えてしまいたくなった。 せっかく注意してくれた人にすら、私は呆れられるのか。
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