陶酔サイバーシティー

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「全部知られてるとかほんと、マジで、穴に隠れたい」 「気付いてもらえなかったら寂しくて死ぬんじゃねえ? クソメンヘラ女だから」 「東くんって、ほんとデリカシーない……」 「悪かったな」 「ほんとにミチコさん?」 「しつけえ」 抱き締める腕が強くなる。何で抱きしめられてるんだろう。意味不明だ。もう全部が意味不明でされるがままになるしかない。目が合ったら、無感情なんかじゃない、心底安心したような瞳が見える。 「泣き止んだ?」 まるでキスでもしてくれそうな距離だった。こんなときにそんなことを考えたから、心臓が可笑しくなっているのだろう。決してミチコが東だったから、安易に好きなったわけじゃない。 「見ての通りです」 近距離に見える東が、頬を笑わせている。完璧な角度で私の顔に顔を近づけてくる。それだけで何も考えられなくなった。 ミチコは誰かが見てくれていると言った。その誰かが東を指しているなら、なんて、思ってしまえば瞼が勝手に降りてくる。 ついさっきまでの絶望はどこへやったんだっけ。
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