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苦言坂裏通りのBarより
やぁ、元気かい?
毎日毎日くそ暑いよなぁ。
そっちはどうだ、体調崩しちゃぁいないかい?
俺は、まぁ元気さ -。
ヒネくれ者は相変わらずだけど、気分も人生も上々なもんさ。
そうそう、こないだ街でアイツにあったんだよ。覚えてるか?
ずっと昔俺たちがツルんでいたアイツさ。
新天町のわき道に鄙びたバーがあったろ?
そこにいやがったんだよ。
店員とかじゃなくて、客としてね。
相変わらず身奇麗にしてて気取っててな。
となりにいた若い奴らに混じって一丁前に人生訓なんてかましてやんの。
それで青臭い夢物語に嫉妬したんだかなんだかしらないけど、横着にも先輩風吹かせてたんだぜ?
何がマイったかって言うとな、その後であの野郎ブランデーなんて注文しやがって、俺に乾杯をせがみだしたんだ。プラチナグラスの底で俺とアイツのヒネた瞳が浮かんで消えてなぁ。
まるで区切りのなかったあの頃を、惜しんでるように思えて泣けてきたんだよ。
あいつのせいで俺もお前もいずいぶん痛い目にあったよなぁ?
お前はさ、夢ばかり見ていたあの頃を青臭いなんて笑ったりするかい?
時の刻みだけがリアルなんだとアイツは言い切りやがったけどさ -。
店の外であのクソ生意気な横っ面をぶん殴って走り去って行ったのはきっと俺の拳じゃぁなかったはずさ。あれはたぶん、惨めったらしく棄て去られそうになったアイツ自身の少年の拳だったと思うんだ。
まぁ、 これは俺のほうの言い訳さ、どうか笑ってくれ -。
ところで今から一杯どうだい?
聞いてほしい話が他にもあるんだよ。
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