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「いやさ、昔は良く文香んち遊びに行って、文香のお母さんにも良く遊んでもらったけって思ってな。なんか久しぶりに会いたいんだよな」
「……じゃあ今日、ウチに来る?」
「え、いいのか?」
「お母さん『最近は新君が来なくて寂しいね』って、『昔はみんなで仲良く遊んでたね』とか言ってたし」
「文香と兄妹みたいになってたしな」
「兄妹か……」
「なんだ?」
「いや、なんでもないよ」
2人の会話は少しぎこちない。昔は毎日のように会ってたし、私と新治は小さい頃からずっと一緒にいたせいか気を使わないくらいに仲良くて、周りからは本当の兄妹のように見えただろう。
新治がそれを自覚しているのかは知らないが、『兄妹』なんて単語を使ってくるのは分からないでもないけど。ちょっと違う気もする。
バスは停留所に着いた。
バスを降りて、私の家まで2人付かず離れず歩く、気付けば歩幅は新治が私に合わせてくれてる。
夕暮れ時になっているからチラッと見た新治の横顔が夕日の陰になっていて、そのシルエットが私には愛しく映った。
「新治ぃ、あんた本当に彼女いないの?」
私はまた気になっている、今の新治のことを知りたくなったから。
「いないよ、そういう文香はいないのかよ」
「だから、いたらどーすんだって」
「マジで言って、お前に彼氏がいたら……」
新治の横顔は相変わらず夕日の陰になっていたが、さっきより少しうつむいた感じのシルエットだ。
「その彼氏よりも数倍カッコ良くなって奪いに行くから」
今のってどういう意味?新治が私たちの関係を兄妹とか親友とか思っているはずなのに、私は困惑してきた。
「あんたが奪いに来ても私は願い下げだけどねー」
また、思ってもいないことを口にしてしまい私は後悔した。
「ひでーな、そりゃねぇだろうが」
「あんたさ、好きな人いるんでしょ同級生で」
私もワケが分からなかった、何でこんな質問したんだか。
「お前さ、俺をからかってる? それともバカなん?」
あんなこと言うのも変だと自分でも思う。だって新治がはっきり言わないから、本当の気持ちを。
「はいはい分かった、もう、はっきり言うわ」
新治は足を止めて、私に向き直った。
「俺はお前のこと、大切な妹としか見てないよ」
え、は?なんだよそれ、反吐が出る。
「新治、ごめん……やっぱり今日帰って」
そう思わず、言ってしまった。
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