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 そう、右腕が肘下から欠損し、そこから血が滴り落ちていたのだ。 「何故……手練のお前が、どうしてそんな……」  わからない。  何もかもがすべて。  混乱する彼の背後から、無数の足音が響く。 「陛下! ご無事ですか!?」 「曲者! 陛下から離れろ!」  口々に叫びながら、近衛兵たちが雪崩れ込んでくる。  手にした松明で照らされた侵入者の姿に、だが一同は等しく言葉を失った。  そこにいたのは、足元に血溜まりを作り立ち尽くす隻腕の男。  血泥にまみれたその顔を見れば、右目も潰れている。  その有り様は、この世に這い上がった亡者のようである。 「陛下、お下がりくだい! 今、こやつを……」  言葉と共に引き絞られる弓弦の音に、彼は我に返った。  慌てて侵入者と近衛兵の間に割って入り、大声で叫ぶ。 「退け! 射かけてはならぬ! 彼者は我が旧知。彼に聞かねばならぬことがある! 」  そうだ。  この者を死なせてはならない。  この者しか知らぬ『あの人』のことを聞かねばならぬ。  その時、背後で鈍い音がした。  近衛兵たちは一様に後ずさる。
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