兎と亀

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一瞬 僕の意識は飛び 気付くと 周りの住宅には チラホラと明かりが灯り 無月 が僕の手を 握っていた。 「無月? あれは なんだったの?」 そう尋ねると 「あれは 人にも 霊にも 化け物にも なれなかった者よ だから この坂を利用して 人になろうとした まあ言わば 蟻地獄の 逆バージョン って所かしら?(笑)」 無月は笑いながら そう答えたが その顔は寂しそうに見えた 「地獄に落ちるって そんな考え方もあるわよね? 登る行為って 結構 神聖な事なの。 日本人は土着信仰が強いから 神社は ほとんどが 高いところにあるでしょ? だからあれも 高いところにいれば きっとこの世から 消えられると思ったのよ だけど ダメだった。 じゃあどうするか? それはね 人柱を建てること つまり 生き人を犠牲にし 自らが生まれ変われると 信じたのよ 哀れね」
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