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私の母の妹、依子さんは自分の子どもを嫌っているように見えた。
子どもの名前は夏子ちゃん。
私より五つ下の十二歳の女の子だ。
私たちは、お正月に母方の親戚一同が集まるときぐらいにしか顔を合わさない。
それでも、依子さんが極端に夏子ちゃんを避けているのは、誰の目から見ても確かだった。
親子なのに変なの。
ずっと、そんな風に思って見てきた。
観察に近いかもしれない。
まず、依子さんは夏子ちゃんに話しかけられても、短くしか返事をしない。
それどころか、無視を決め込んでいる節がある。
夏子ちゃんが依子さんの腰に抱きついたとき、思いっきり突き飛ばしたことがある。
当時、まだ五歳の子をだ。
泣くのでは?そう思った。
でも夏子ちゃんは楽しそうに笑っていた。
ケタケタケタ。
不気味な笑い方だった。
依子さんは、あまり親戚との関わりを持ちたがらない。
だからお正月に会うときも離れた場所にいることが多かった。
それでも二人のことを鮮明に覚えていられるのは、あの突き放し方と不気味な笑い声のせいかもしれない。
目がいってしまう。気になってしまう。今日だってそう。
久しぶりに会う夏子ちゃんを目で追っていた。
お正月以外で会うのは初めてだ。
その初めてが依子さんのお葬式だなんてね。
過労死だと聞いた。
夏子ちゃんは目立っていた。
それもそうだ。だって今日の彼女の姿はーー。
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