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◇◇◇
依子さんが亡くなって間を置かずに、今度は夏子ちゃんが亡くなった。
衰弱死だと聞いている。
〝さようならをするの〟という発言通りになってしまうだなんて。
どこにぶつけていいかわからない怒りが込み上げてくる。
棺の中で永久の眠りについた彼女を見る。
白の死装束に身を包んだ姿は、依子さんのお葬式で見た服装を連想させる。
もしかして、あのときからこうなることを予期していたの?
だからこその白のマキシ丈ワンピースだった?
身体が、ブルッ、と大きく震えた。
これは冷房が効き過ぎているからだ。
焼香台から離れると自分の席へと戻った。
お経を聴きながら、改めて依子さんと夏子ちゃんの関係性に思いを巡らせていた。
「まだ十代でしょう?」
「依子さんが呼んだのかもしれないわね。死に際に夏子ちゃんの名前を連呼していたっていうじゃない?それで本当に亡くなったのよ」
「母子家庭だったし、なんだかんだで支え合ってきたのもあるんだろうけど」
「だからって、ねえ?こんな立て続けに亡くならなくたっていいのに」
「ま、仕方がないことよね」
好き勝手に話している。
火葬場での待合室で偶然、耳に入ってきた。
彼女らは夏子ちゃんたちのことをどの程度まで知っているのだろう。
どちらにしても聞いていたくなくて、場所を移動しようとした。
その瞬間、グニャリ、と視界が歪む。そのまま反転した。
「あら?!やだ!」
「ちょっと!誰か!誰かきてーっ!」
耳の奥にまで響く声。
そんなに騒がないでよ。
声が増えて、私の周りを取り囲むよう。
気持ちが悪い。
火花が見える。
目の奥で火花が弾け飛んでいる。
徐々に線香花火のように形をかえていき、膨らんで、落ちた。
それを拾う手が見える。真っ白な指先。
ケタケタケタ。
ああ、夏子ちゃんが笑っている。
そこまで考えて、私は意識を手放した。
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