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「ーーっ!?」
声にならない声をあげて、飛び起きる。
額には幾つもの汗の玉が浮かんでいる。
その一つが流れ落ちてきて、目に入る。
痛む片目を押さえて、状況を理解しようと試みる。
布団に寝かされていたみたいだ。
どうやらあのあと倒れたっぽい。
和室に私はいる。
(はあ。情けない)
睡眠不足が続いていたとはいえ、とんだ迷惑をかけてしまった。
掛け布団を掴む。
(あれ?火葬場にこんな場所なんて普通あるだろうか?)
「大丈夫?」
背後から声がする。
喉が、ヒュッ、と鳴る。
「ねえ、大丈夫?未奈ちゃん」
嫌な汗が背中を流れ始めてきた。
掛け布団を掴む手に力を込める。
これは夢?そうだよね。
そうとしか考えられない。
だって夏子ちゃんの声がするなんて、あり得ないことだもの。
「大丈夫って聞いているのにな」
背後の気配はより濃いものとなって、身体中に纏わりつくようだ。
あまり良い夢とはいえない。早く目覚めたい。
私の腰に白い手が回される。
異様に細く真っ白な両腕が抱きしめてくる。
「…ひぃっ」
悲鳴をあげる。
ケタケタケタ。
「未奈ちゃんに特別見せたいものがあるの」
腰から腕が妖しく移動していく。
両目を隠された。
ひんやりとした感触が妙にリアルでぞくりとする。
「ねえ、大丈夫?」
「うん!ただの風邪だから大丈夫!」
私の口から勝手に言葉が出る。
声も私のものじゃない。幼さを感じさせる。
視界がゆらゆらと揺れている。
頭もボーッとしている。
目隠しを外されていることに気がつき、見える範囲で場所の確認をする。
さっきとかわらない和室にいる。
三面鏡と仏壇がある。
仏間?
この部屋で夏子ちゃんと二人で遊んだことがあるような?
仏壇にある鈴を何度も鳴らして叱られた記憶がある。
「違うよ。それは依ちゃんと桜子のやり取りだよ」
「そう…だっけ?」
「そうだよ」
ふと、気づく。
私、声に出していた?
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