魔女ふたたび

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 Xが目を開けば、目の前には巨大な門があった。  金属の格子によって硬く閉ざされている門の向こうには、桃色に近い色をした不思議な空を背景に、西洋の城を思わせる建造物が見て取れる。逆に言えば、それ以外のものはこの場には存在しておらず、振り向けば桃色の空と果てしない荒野だけが広がっている。本当に「何もない」場所に、この門と塀、そして城のような建造物だけが、不自然な形で建っているといえた。  また、門は格子で閉ざされているだけではなく、門の左右に二つの鎧が立っている。顔全体を覆う兜を被っているため顔をうかがうことはできないが、剣を携えたその姿勢から考えるに、門番のようなものと考えてよいのではないだろうか。  果たして、Xは門への接近を試みようと考えたらしい。一歩、また一歩と恐る恐る歩を進めていく。  その時、だった。  にゃーお、という声がスピーカーから聞こえてきた。あまりにも場違いな、猫の鳴き声。Xが足元に目を向けると、いつからそこにいたのだろう、影を固めたような真っ黒な猫が、金色の目を煌かせて座っていた。  猫。そういえば、どこかで猫を見かけたことはなかったか? いつかの『異界』への『潜航』で。それは、確か――。
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