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「…でもさぁ。今日もアタック頑張ろー!ってなったのに勇気出せなかった〜‼︎」
彼はチキンなので中々進まない。宿題を教えている時も「…うぅ…だってぇ…間違えたら怒るでしょお〜。」などと日和って見せなかったりする。
「な〜ぐ〜さ〜め〜て〜‼︎」
「僕に言われても困るよ…ハァ。」
「あー⁉︎今、面倒臭いって思ったでしょ!」
「ウウンソンナコトオモッテナイヨー。」
「棒読みじゃん‼︎」
いや、マジで面倒臭い。が、ここでそんな事を口に出したら余計面倒臭くなるので言わなかったのに…僕の友達はエスパーになってしまったのだろうか?
「ぷくぅ…もういいもん。あっそう言えばさぁ〜黒ちゃんが借りたがってた本、入荷してたよん。」
「え?あの本が?…ありがとう健也。お礼に話聞くよ。」
「え〜マジ!…実はさぁ___」
…僕は激しく後悔した。彼の話が長すぎて放課後まで残る羽目になったのだ。
「それでね〜、ペラペラペラペラって感じだったの〜。…あっ!もうこんな時間だ。今日はありがとーじゃあね〜!」
彼が教室から出て行くのを見届けると、僕は急いで図書室に向かった。図書室に着く頃には日が暮れていて窓の外から赤い夕焼けが見えた。
黄身が溶けた様な太陽に、赤の霧が辺りを包んでいる。
(…綺麗。)
お目当ての本は中々見つからず、外はとっぷり暗くなってしまった。
「…はぁ。付き合わなきゃ良かった。」
本が手に入った喜びと長い時間を無駄に使った疲れで複雑な気持ちで帰路につく。
カァカァと鴉が鳴き、僕に夜が来るぞと知らせて来た。実際辺りはもう真っ暗で、ガラケーを覗くと丁度6時を指していた。
暗闇の中で街のネオンと街頭の光だけが僕の行く末を照らし出す。
すると僕の前を一匹の黒猫が横切った。しかもその後も、また別の黒猫達が一斉に僕の前を横切ったのだ。
(…不吉だな。普通こんな事起こらないでしょ。)
黒猫は不吉の象徴だと聞いた事がある。その黒猫が横切る事は縁起が悪いんだとか。だとしたらこれから僕に何か恐ろしい事でも起こるのでは…?とそこまで考えて怖くなり、頭から振り払う。
僕は余りにも数が多い黒猫を見ると、一匹が裏路地に入る。
(あれ、この路地…確かヤンキーの溜まり場だった様な?…まずい!)
僕は慌てて黒猫を追いかけた。
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