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「同朋がいるなら手を上げるわけにはいかない。しかしどうも……一般人には見えねぇな。軍隊経験者か? そっちの男は中東系にも見えるが」
「この二人はあたしの護衛さ。二人は信徒じゃないけど、身元はあたしが保証する。彼らはエアロンとグウィード。あんたは?」
先頭の男は仲間が落とした光の輪の中に進み出た。かなり大柄な男だ。粗野な性格が無精髭によく表れているが、きちんと身形を整えればそれなりの顔になるだろう。
男は笑みも返さず自己紹介した。
「俺はエルマン。一応ここの指導者ってことになってる。それにしても、女が来るなんて珍しい。アグネスはなんで帝国に?」
「夫に会いに」
エルマンの口から悲しげな溜息が漏れた。
「……なるほどな。それなら俺たちの軍隊に加わればいい。俺たちはこっちで同朋を集めてるんだ。あんたの旦那も合流しているかもしれないぜ」
三人は躊躇うように顔を見合わせた。指名手配犯のグウィードは特に不安そうだ。それを見たエルマンが慌てて言う。
「ああ、いや、嫌ならいいんだ。帝国までの道中、仲間が多い方が安心だろうと思っただけだ。そっちの兄ちゃんはお気に召さないようだしな」
「いいや、有難くお言葉に甘えさせていただくよ。信徒じゃない人間も歓迎してもらえるのかい?」
「俺たちの信仰を馬鹿にするような真似をしないならな。あんたの護衛さんたちは腕も立ちそうだし、戦力になってくれればこちらも助かる」
エルマンが手を差し出す。アグネスは薄い笑みを浮かべて握り返した。
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