14.野営地

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 14.野営地

 神官十字軍の野営地はそこから二十分程歩いた所にあった。  寄せ集め民兵の野営地にしては随分と見栄えがいい。というのも、簡易テントに混じって木造の掘立小屋が二軒ほど並んでおり、立ち釜や調理台といった生活に必要な家具まで揃っているのだ。十日近くこの場所に留まり仲間を集めているそうで、規模は小さいながら立派な集落と呼べる代物になっていた。  エルマンは三人の新参者を連れて、キャンプの外れ、見張り番が集う焚火へと近付いた。 「遅かったな」  彼らに気付き、一人の男が立ち上がる。炎が面長の横顔を照らした。 「同志を三人連れて来た。こっちはどうだ? 異変はないか?」 「何も。おや……随分変わった取り合わせだな」  エルマンが双方を引き合せた。 「こっちはアグネスと彼女の護衛。エアロンとグウィードだ。それから、こいつはラファエル。俺たちの副指揮官を務めてもらってる」  アグネスこと椿姫(つばき)が二コリと笑みを溢す。ラファエルは彼女の手を取ると朗らかに笑い返した。 「そんな大層なことはしてないさ」 「ラフィ、アグネスにゃ手は出すなよ。旦那持ちだ。それから護衛の二人は怒らせない方がいいぞ。かなりの手練れらしい」 「おいおい、お前と一緒にしないでくれないか。初めまして、アグネス、エアロン、グウィード。君たちを仲間にできて嬉しいよ。仲間が増えるに越したことはない」  天使の名前を持つ男は、厳めしい顔付きに似合わず温厚な為人のようだった。栗色の長髪を一つに纏めて結っていて、曝け出した額に小さな裂傷がいくつか残っていた。初対面の人間には愛想よく振る舞うが、ふとした瞬間に物憂げな表情を見せる、中々に不思議な印象を受ける男だ。  ラファエルはそれぞれと握手を交わした後、改めて椿姫に向かって首を傾げた。 「君たち、随分と軽装なんだな。テントを一つ貸してやりたいけど、女性は小屋の方が安心か? 女性は他にも何人かいるから、共同で使ってもらうことになるけどな」 「気遣いありがとう。でも、あたしはこの二人と一緒にいた方が都合がいいんだ。たぶん、この二人だけで置いておいたら、そちらとしても少し不安なんじゃないかい?」  彼女は無意識に首に手をやるエルマンを見てクスクス笑いを漏らした。ラファエルは不思議そうに二人を見るが、エルマンは咳払いで説明から逃げた。 「それもそうだ。よし、付いて来い。まだ空きは何箇所かある」
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