緑の道

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マシードは恐る恐る娘が目を開けるのを待った。 何しろ自分勝手なことを言っているのは 十分自覚がある。 激怒されてどんな目に合されるか 内心、ひやひやしていたのだ。 娘は閉じた目を開けた。 そしてマシードに言った。 「それが民の意思なのですね」 とぽつりと言った。 そして話しだした。 最近オアシスに寄ると木々が切られた状態で 放置されているのをみかけるようになった。 自分は、この地に済む人の為に この杖をついて穴を開け神通力で この地に流れる水脈を引き上げている。 この地の水脈は深すぎて今の人々の技術では 水路を作ることができない。 「オアシスが賑わっているのは知っていました。 でも、人口が増えすぎて木々が増える以上に 切られるのが速いとは知りませんでした。 高僧達も教えてはくれませんでした」 娘はぽつりぽつりとマシードに話し、 「自分にできるのは、 ただ砂漠を歩いて緑の道を作るだけと 思っていました」 そう言って、涙を流した。 そして 「民の願いが、ただ緑が欲しいのではなく 多くの水と緑を欲しいというのならば、 私はそれをあなたに託そうと思います。 マシードさん、ついてきてくれますか」 マシードは頷いた。
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